ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・イチロー編~

2016年9月20日 コラム

文=Daisuke Sugiura

 現在のメジャーリーグで活躍する選手たちの中で、第4回WBCに参加した場合に最もインパクトがある日本人選手は誰か―――。その答えがイチローであることに異存のあるファンはほとんどいないだろう。
 今年8月7日、MLB史上30人目の3000本安打を達成した稀代のヒットメーカーは、日本が生んだメジャーリーガーとしては“別格”の実績を積み上げてきたからだ。2001年に新人王とMVPを同時受賞、2004年には262本という1シーズン最多安打記録を樹立、デビューから10年連続200安打以上、さらにはオールスター10度、ゴールドグラブ賞10度・・・etc。そんなイチローの偉大なキャリアの中で、WBC第1、2回で侍ジャパンの連覇の立役者となったことも忘れられるべきではない。特に第2回大会の決勝戦で放った決勝打は、侍ジャパンの、いや、WBCの短い歴史に燦然と輝くハイライトシーンだと言って良い。

 2009年の第2回大会、韓国を相手にした決勝戦―――。死闘は3−3のまま延長に突入する。延長10回表2死から、2人のランナーを置いてイチローが打席に立った。この大会では不振だった天才打者はここでセンター前に2点タイムリーをはじき返し、日本を2連覇に導く決定的な勝ち越し点をもたらしたのだった。
「第2回大会を終えた時点で3回目の出場は考えられませんでした」
 最初の2度の大会を制した後、イチローはそう語って第3回の出場は辞退した。すでに最高級の見せ場の主役となり、もうやりきったという思いがあるのなら、来春の第4回大会の出場の可能性も低いのかもしれない。

 ただ・・・42歳になり、メジャーでレギュラーではなくなった今でも、イチローの存在には依然として大きな価値があるように思える。
「(イチローから学んだのは)準備の大切さだ。4回からの登場だろうと、先発だろうと、9回の代打だろうと、彼は常に同じように準備ができている。まるで1日中準備ができているかのようなんだ」
 マーリンズのチームメートであり、2014年にナ・リーグ本塁打王に輝いたジャンカルロ・スタントンがそう感嘆していた通り、イチローのベースボールに懸ける姿勢は依然として多くの選手、関係者のリスペクトを集め続けている。

 チームの看板、リーダーとして、これ以上の存在はいない。アメリカの風土、各国のプレーの質を知り尽くしていることも好材料。そして何より、今季も前半戦では規定打席不足ながらマーリンズ内でトップの打率.335を残すなど、依然としてトップレベルでプレーできる力を保っている。だとすれば―――。

 あの伝説的な決勝タイムリーから、来春で8年。まだ力を残している。イチローが再び侍ジャパンのユニフォームに袖を通し、WBCの舞台で躍動する姿を待ちわびているのは、日本のベースボールファンだけではないはずである。