ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・田中将大編~

2016年9月24日 コラム

文=Daisuke Sugiura

 9月21日のレイズ戦でメジャーでの自己最多14勝目(4敗)に到達―――。ヤンキースの田中将大が今季に渡米以来最高のシーズンを過ごしていることは間違いない。
 最新のレイズ戦では6回4失点で防御率は2点台から転落したものの、3.07は依然として打者有利のア・リーグで堂々のトップ(9月21日現在)。 何より、今季はすでに199回2/3を投げ、メジャーにおける一流先発投手の条件である“投球回数200イニング突破”を確実なものにしているのも見逃せない。

「ただ数字(イニング数)を積み重ねるだけじゃ意味ない。やっぱりしっかりチームの勝利に貢献できる、中味の濃い投球をしていかないとダメだと思うので」
 6月下旬に今季16試合目で100イニングに達したときには、田中はそう語って決意を新たにしていた。その言葉通り、後半も質の高い投球を続け、今季先発した31試合でチームは23勝8敗。最近では“サイ・ヤング賞候補”の声も挙がるなど、メジャー3年目にして名実ともにヤンキースの真のエースに就任したと言って良い。
  そんな田中が背負う重責の大きさを考えれば、第4回WBCにヤンキースはこのエースを送り出したくはないかもしれない。特に今季はプレーオフ逸が濃厚になったヤンキースにとって、2017年は重要なシーズンになる。田中は2014年に右肘じん帯部分断裂を患っていたことを考えれば、なおさら慎重を期したいところだろう。

 しかし・・・今季の田中は一度もローテーションから外れることなく投げ続け、そのコンディションを証明してきたことを忘れるべきではない。21日のレイズ戦後に右上腕部に張りを訴えて次の登板こそ回避することになったが、チーム、本人ともに軽症であることを強調している。
「田中は去年より良いピッチングをしているね。スライダー、スプリッターのキレが良い。正直、(2014年の故障直後は)すぐにでも手術を受けるべきだと思ったが、少なくとも今の彼は身体を気にしながら投げているようには見えない」
 今年5月の時点で、某MLBチームのベテランスカウトはそう証言していた。以降も順調にイニングを積み重ねる過程で、右ひじの状態を懸念する声はニューヨークでもほぼ完全に消えてなくなった。それならば―――。

 WBCには過去2大会連続で出場している田中だが、良い思い出ばかりでもない。2013年の第3回大会では日本のエースとして期待されながら、予想外の不調を囲って中継ぎに降格。結局は7イニングを投げたのみに終わった。
 そんな田中に、来春、リベンジの機会は訪れるのかどうか。今季中にヤンキースの大黒柱として確立したあと、今度は日本代表のエースとして国際舞台で雪辱を果たせれば・・・そんなシナリオが現実のものとなれば、田中の輝かしいキャリアの中でも最高級のハイライトになるはずである。