ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・川﨑宗則編~

2016年11月22日 コラム

文=Daisuke Sugiura

「長かった・・・スプリングトレーニングから始まって、メジャーに行ったり来たり。最後にこうやってカブスに残って、ワールドシリーズまで行けて、本当にこんなに嬉しいことはないです。本当にアメリカに来て良かったです」
 所属するカブスが11月2日のワールドシリーズ第7戦に勝ち、実に108年ぶり3度目の世界一を達成。その後のシャンパンファイトで、川﨑宗則は喜びを爆発させた。

 今季の川﨑はマイナー生活がほとんどだった。出場機会はわずか14戦(打撃成績は21打数7安打)で、試合数、打席数などは渡米以降では最小。プレーオフのロースターからも外れ、ムードメーカーとしてチームに帯同するにとどまった。存在感も減少した感は否めず、満足出来るシーズンではなかっただろう。

 ただ、そんな状況下でも悪びれず、妙に恥ずかしがらず、仲間たちとともに勝利を喜ぶことができる。それが川﨑のキャラクターであり、愛される理由でもある。
「とにかくチームが勝つように精一杯、応援していました。凄いチームですよ。みんなが本当によくやってくれました。本当に感謝しています」
 昨年はブルージェイズでア・リーグ優勝決定シリーズに進み、今年はカブスで世界一。川﨑の所属チームは2年連続で上位進出を果たした。そのゲンの良さを、第4回WBCで日本代表にももたらして欲しいと考えるファンは多いかもしれない。

 もちろんこの35歳は単なる“ラッキーボーイ”ではない。二塁でメジャー通算119戦、三塁で24戦、遊撃手で102戦出場と、内野の複数のポジションを守れる器用さは依然として魅力。今季は確かにメジャーではプレー機会が少なかったが、3Aでは遊撃手として102試合で出塁率.352、20盗塁と悪くない成績を残していた。

 日米の様々なフィールドを熟知している上に、小久保監督とはダイエー、ソフトバンク時代の同僚でもある。そんな大ベテランなら、スーパーサブとして、チームリーダーとして、侍ジャパンでも貢献の術は見つけられるはずである。
 川﨑には過去のWBCで活躍した経験もある。2006年の第1回決勝戦では最終回にイチローの適時打で2塁から生還し、相手捕手のブロックを掻い潜るスライディングで話題になった。また、2009年の第2回ではサードで5試合に出場し、準決勝のアメリカ戦では2安打1打点1盗塁で勝利に貢献した。

 このように様々な形でチームを助ける勝負強さが、第4回WBCでももう一度発揮されれば・・・。来春、準決勝、決勝が行われるのは、ロサンジェルスのドジャースタジアム。そのクラブハウスにて、“勝利の使者”川﨑が再びシャンパンファイトでチーム愛を爆発させる姿を想像するのはそれほど難しいことではない。